【体験談】上司に「身体障害者手帳を提出して」と言われて──障がい者雇用制度とS-ICDを植込んだ自分の働き方

就職転職仕事
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ある日、職場の上司から「障害者手帳の最新のものを提出してもらえますか?」と声をかけられました。

不意に言われたことで、少し戸惑いました。急に言われたので少し戸惑いがありましたが、「ハローワークへの障害者雇用の報告があるため」「企業として雇用状況を把握する必要がある」とのこと。さらに、障害者雇用納付金制度が背景にあることも説明されました。

その瞬間、私はあぁ確かにそんな時期だなと思いました。

私も以前はそのような報告や管理を行う側でも働いていたのですが、このタイミングだったと思い出しました。ただ

「手帳を伝えるって、どんな意味があるんだろう?」
「そもそも、働くうえで制度とどう関わっていくべきなんだろう?」

この出来事をきっかけに、制度と、S-ICDを植込んだ自分の働き方について、あらためて考えることになったのです。


企業には“障害者雇用の義務”がある

障害者手帳を持つことで、さまざまな制度を利用することができます。その中で、就労に関係する制度として大きいのが「障害者雇用率制度」と「障害者雇用納付金制度」です。

企業には、一定割合(現在は2.5%)の障害者を雇用する義務があります。達成できない場合は納付金を支払い、反対に超過して雇用している場合には調整金や助成金が支給されるケースもあります。

つまり、障害者手帳を持つ社員が在籍していることは、企業にとっても制度上のメリットがあるのです。


働く中で手帳を取得した場合──伝えるかどうか

私の場合、S-ICD(皮下植え込み型除細動器)を体に入れることになり、身体障害者手帳を取得しました。不整脈など心疾患のリスクを管理する医療機器であり、命を守る一方で、電磁波や過度な運動への配慮、体への負担のコントロールが必要になる機器でもあります。

そうした事情から、働き方にも影響が出るため、勤務中に手帳を取得した際に会社へ共有するべきかどうか、私自身も悩みました。

「周囲に知られたくない」「変に気を遣われたくない」
一方で、「必要な配慮を受けたい」「体調が悪くなった時に備えておきたい」──その両方の気持ちが交錯していたのです。

結果として私は伝えることを選びましたが、その理由は以下のようなものでした。

伝えることで得られたメリット

  • 就業中の配慮(通院への理解、作業負担の調整など)
  • 会社側も雇用率報告の対象にでき、制度的な利点がある
  • 緊急時に備えて上司や人事が状況を把握できる

企業側も、個人情報の取り扱いには注意を払う義務がありますし、手帳のことを伝えたからといって、他の社員に勝手に共有されることはありません。


就職活動中の場合──いつ伝えるかも悩ましい

これから就職・転職を考える人にとって、「障害者手帳を持っていることをいつ伝えるか」は非常にセンシティブな問題です。

早い段階で伝えた方が良いとされる一方で、書類選考で不利になるのではと心配する声も少なくありません。

私自身も、伝えることで実際に書類選考が通りづらくなったりと不利益があったと思っています。

そのため、私は企業とある程度信頼関係を築いてから伝えるという方法もアリだということ。
たとえば、書類選考を通過し、面接で自分の仕事への姿勢や実績を伝えたうえで、「こういった事情があるので、○○という配慮があるとありがたい」と伝える。そうすることで、採用側も理解しやすく、前向きな話になりやすいと感じます。


「言われたから出す」ではなく、「自分のために伝える」

最初は「上司に言われたから手帳を出すか」という、いわば“受け身”の行動もありと考えていましたが今は、「伝えることで自分の働き方を守れる」という意味のある選択だと思えるようになりました。

制度に詳しい会社ばかりではないかもしれません。
だからこそ、自分の状態をきちんと伝え、必要な配慮を受けることは、自分自身の安全や安心に直結します。

障害者雇用の制度は、働く人を守るためのしくみです。
それを上手に使えるようになると、「障害があるから働きづらい」のではなく、「障害があっても、安心して働ける」環境に少しずつ近づけると思っています。


最後に

障害者手帳を会社に伝えるかどうか、どのタイミングで伝えるかは人それぞれです。
でも、言われたからこそ改めて制度のこと、自分の働き方のことを考える機会になったのは確かです。

伝えることで会社との信頼関係が深まったり、働きやすさが増すこともあります。

「伝えること=不利になる」ではなく、「伝えること=自分を守る選択肢」として、前向きに捉えてもらえる理解のある会社と時間をかければでてくると信じています。

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