― 障害厚生年金3級・国民年金・自営業への切り替えを制度で整理する ―
S-ICD(皮下植込み型除細動器)は、致死性不整脈による突然死を防ぐ目的で体内に植え込まれる医療機器です。
S-ICDを装着した方の中には、会社員として働いていた時期もあれば、その後に独立して自営業になる方もいます。私も当時、会社員として働いていた時期で心室細動で倒れ、S-ICDを植え込むことになりました。
S-ICDを植え込むと定期通院や入院、手術、状態により服薬も必要となり、何かと費用が発生します。そのために障害年金の申請をしました。ただし障害年金を受給することで、人や会社によっては不公平な扱いや理不尽な扱いを受けることもあります。受給していることは、私個人的には不要に伝える必要はないと考えています。(現に他者に伝えなくても不都合なことはありません)
ただ受給するために自分で日本年金機構のHPや年金事務所窓口で内容確認をするなど時間を費やしたこともああります。
今回の記事は、これから障害年金を検討されている方や私が今後どうなるの?と思った部分からのことを少しまとめたいと思います。
本記事では、S-ICDと障害年金について、制度上の内容を整理します。
1.S-ICD装着=障害年金が支給される制度ではない
まず前提として、障害年金は
- 医療機器を装着しているか
- 特定の治療を受けているか
だけで支給される制度ではありません。
障害年金は、国民年金法・厚生年金保険法に基づき、
- 初診日要件
- 保険料納付要件
- 障害状態該当要件
を満たした場合に支給されます。
このうち、障害状態該当要件では、
日常生活能力および労働能力の制限の程度が審査対象となります。
そのため、S-ICDを装着している事実のみを理由に、障害年金が支給されることはありません。
2.S-ICDと障害年金の傷病区分
S-ICDは主に、
- 心室頻拍
- 心室細動
- 致死性不整脈
- 心筋症
などの心疾患に対して使用されます。
障害年金制度上は、これらは**「心疾患による障害」**として取り扱われます。
審査では病名ではなく、
障害認定日時点の状態が評価されます。
3.障害年金は「初診日の年金制度」で決まる
障害年金で最も重要なのは、
初診日にどの年金制度に加入していたかです。
初診日とは、
- 初診日から起算して1年6か月を経過した日
- 心臓ペースメーカーを装着した日
のいずれか早い日となります。
私の場合は、S-ICDを植え込んだ日が初診日となったため、1年6か月を待たずして申請ができました。
初診日と請求できる年金
- 初診日が厚生年金加入中
→ 障害厚生年金 - 初診日が国民年金加入中
→ 障害基礎年金
この区分は、その後の働き方が変わっても変わらないようです。
4.厚生年金と国民年金の制度上の違い
障害厚生年金(会社員等)
- 等級:1級・2級・3級
- 3級は「労働に制限がある状態」が対象
障害基礎年金(自営業等)
- 等級:1級・2級のみ
- 3級は存在しない
違いは、3級があるかどうかかなと思います。私の場合は、3級での対応となります。
そのため、会社員等で厚生年金に加入していたため現在受給ができています。
- 国民年金だから障害年金が出ない
という制度は存在しません。
初診日が国民年金であっても、
障害基礎年金2級または1級に該当すれば、制度上は対象となります。
ただし、国民年金には3級がないため、
同じ状態であっても結果が異なることがあります。
5.障害厚生年金3級を受給した後に独立した場合
私が少し気になったことが、今後仮に私が国民年金に切り替わった場合にどうなるのか気になりました。
障害厚生年金3級を受給した後に、
会社を辞めて自営業となり、国民年金へ切り替えても、
それだけを理由に3級が打ち切られることはないようです。
理由は明確で、
- 障害年金は「初診日」と「障害認定」によって成立する権利
- 現在加入している年金制度とは別に管理される
からです。
つまり、
- 初診日:厚生年金
- 障害認定:障害厚生年金3級
であれば、その後に国民年金へ切り替えても、
受給している年金の種類が変わることはありません。
6.更新(再認定)で見られるのは何か
障害年金には、有期認定(更新)が設定される場合があります。
更新時に確認されるのは、
- 障害状態が継続しているか
- 等級に該当しているか
であり、
- 国民年金か厚生年金か
- 会社員か自営業か
は、直接の審査項目ではありません。
等級の変更や支給停止がある場合は、
障害状態の評価結果によるものです。
S-ICDを植え込んでいる状態の現在から状態が良くなるということは基本あまり考えられないのかと思います。私も年齢を重ね、服薬が始まるなどで今が一番いい状態で今後悪くなっていくと考えています。
7.診断書で確認される事項
障害年金の審査は、書面審査です。
特に診断書では、
- 心疾患の状態
- 治療・医学的管理の内容
- 日常生活上の制限
- 就労に関する制限
が確認されます。
S-ICDについては、
装着の事実そのものではなく、装着に至った医学的背景と制限内容が重要になります。
私の場合は、会社にも配慮してほしい内容をお伝えしており、勤務時間や働き方についても配慮していただいていることもしっかりと医師に伝えています。
8.まとめ
- S-ICD装着のみを理由に障害年金が支給される制度ではない
- 障害年金は「初診日の年金制度」で決まる
- 厚生年金には3級があり、国民年金には3級はない
- 障害厚生年金3級を受給後に自営業へ切り替えても、受給権は消えない
- 更新で見られるのは障害状態であり、加入制度ではない
S-ICDは外見からは分かりにくい医療機器ですが、
障害年金制度では、制度に基づく客観的な事実で判断されます。
誤解や不安から制度を避けてしまう前に、
まずは正確な制度理解が重要です。
日本年金機構に電話確認や年金事務所で相談して情報整理や確認することや、専門家の障害年金を代行申請していただける、社会保険労務士の先生に依頼することも一つです。
※本記事は調べた内容などをもとに記載しているため、制度改正によってなどで内容が実際と異なることがあります。あくまで参考として確認いただければ幸いです。
参考:日本年金機構 障害年金 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html?utm_source=chatgpt.com

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